生霊との遭遇、時間解釈

もっと込み入ってるけど纏めるために要素を削っているよ。以下三峰旅の続き。

帰宅してすぐ、コヤラちゃん(根津のsun&rainで買ったホピのカチーナ。精霊の依代)に挨拶した。

コヤラちゃんは進撃で死にそうな時握ると、大木に触れたのと同じような感覚になって、焦って死にそうな意識を助けてくれた。
人間よりもっとゆっくりな時間が流れているから、忙しいとか許せないとか、負の感情で追い詰め麻痺した時間感覚をフラットに戻してくれる。
顔には目鼻口がペイントされており、笑っている表情が描かれている。

だがこの時は違った。明らかに怒っているのだ。
勿論ペイントされた顔は変わらない。でも怒っている。それだけは理解できた。
怒りというか、叱っている。私に対して。
「なんつー危ないとこ行ったのか!おばか!無事でよかったけど!もうやめてよね変なとこ行くの!変なのついてきてないよね?!まったく!」みたいな感じ。
いつも優しいけど、親身になってくれる精霊でもあったのか。幸せだ。しゅんとしてごめんと謝った。

思い返せば本殿で引いたみくじは「カエル。無事に帰る。変える。」だった。踏んだり蹴ったりではあったが、カエルはとても象徴的だった。
確かに体の変化、ひいては耳がやたら敏感に変化していた事がよくわかった。
迷い迷っていたので、もっと幸せになれそうな威勢の良いのを引きたいとなんとなく思っていた。無事帰るのなんて当たり前じゃん。地味!と。
無事に帰れない可能性もあったのかも知れない。

数日経った。
深夜電気を点けっぱなしで、ベッドでうとうとしていた。
中高の頃からよくやるパターンだ。
無意識に、1日が終わるのを惜しく感じてるからそういう行動を取るのだろうか。
風呂に入り歯磨きして寝る、という、1日の終わりの行動が昔から下手くそで、汚いまま寝入る事が多かった。

ガガガガガガガガン!ガガガガガガガガン!

突然玄関を叩く大きな音が。ハッと目を覚ました。
何か喚く声もする。

あんたまた電気点けっぱなしにして!!開けなさい!
ガガガガガガガガン!

聞いて、寝たふりだ!と判断した。

怒り狂った狂人だ。母親がこんな深夜に家に来るなんて、いつもどうかしてるけど、本当に頭がおかしくなったんじゃないか?

瞬間的にそう感じた。実家にいた頃やられた嫌な行為。娘がいい年になったのに、まさか実行しに来るとは。車を運転してまで?
音は確かに聞こえた。何しろその音でびっくりして起きたのだ。寝ぼけまなこで、隣近所に迷惑がかかると思った位の音量だった。

開ける訳にはいかない。開けたら説教だ。しかも2、3時間も続くやつ。

身を硬くして去るのを待った。段々覚醒してきて、思考がはっきりしだした。街は静まり返っている。怒鳴り声に起き出して伺う様子もない。
部屋には盛り塩をしてるし、コヤラちゃんもいる。カチーナはそもそも家を守る精霊だ。今日こそまさに適役の日だった。
耳をそばだてると何か文句を吐き捨てながら消えたようだった。

先生に連絡を入れて状況説明しつつ。
恐怖だった。何年も前の事なのに、フラッシュバックのように嫌な情景が思い出された。
正体は分かっていた。母親の生霊だ。

母親の生霊に殺されそうになった事が昔一度あった。
真っ黒い影で顔がなかった。
コナンの犯人みたいな、顔も真っ黒バージョン。
実家のベッドで寝ている私を横に立って見下ろし、包丁を腹に突き立てようとした。秋か冬だったのか、厚手の布団を被っていて幸いした。布団の厚みに阻まれて包丁が通らなかったのだ。
目が覚めたら同じベッドで寝ていた。同じ景色だったが影だけおらず、母親に確認したら「あんたの部屋に入るはずない。用がない」との事だった。
でもあれは母親だったと確信している。当時私にそこまでの殺意を抱くのは彼女しかありえないからだ。

あの黒い影を思い出して、体が冷えた。とっくに乗り越えたと思ったのに。
いや待てよ、私は強くなった。既にかなり乗り越えている。まだ沼に嵌ったままなのは母親の方で、まだ娘を世話「してあげないと」アイデンティティを保てないのか。もう老婆なのにまるで子供のままで、一向に成長するそぶりはない。
なんて哀れなんだろう!(それに比べて私の賢明さときたらすごいな!)
いつでも認められたくて完璧主義で、子供を貶め自分を上げる事に余念無く、愚痴悪口のオンパレードで、脅迫して子供の行動を操作する。ヒステリックで殴る蹴る。一緒にいて楽しいと思う所はカケラもないが、外面はよく常識的。
もうそれなりに高齢だし、このまま会う事なく生を終えてほしい。

そんな奴に恐怖を刷り込まれた自分。
先生に指摘された。「もう勝てるのにまだ逃げてる。もう勝てるからやっちゃいなさい。」
だから耳が変化した。不当な恐怖を人生から払拭するために。踏んだり蹴ったりの旅は全てこの為の前ふりで。
物理的には実家から離れているから安泰だが、精神にはまだ植えつけられたものが根を張っている。その雑草を抜くにはチャンネルを合わせ、同じ土俵で勝たなくてはならない。
聞こえてない時、もしかしたら玄関から入ろうとしていたこともあったのかもしれない。
聞こえたから、そういうアクセスがあったことを知った。だから撃退する事ができる。

一発くれてやるどころか、やってやらねばフェアではない。子供の頃から延々死んでいたのだから当然だ。

頭の中は自由だ。生かすも殺すも思いのまま。
だからやってしまえ。まずはやられたことをやり返す。その後は思いつく限りの手法で。

やり尽くして2回ほど地獄に行ってもらった。

まだ残っている雑草がふとした瞬間顔を出す。でもその度に過去に舞い戻り、記憶の中でやっつける。そして気の毒な過去の自分を守り、言い聞かせる。
いつでも側にいると。過去の出来事は変えられないけど、現在の私はいつでもあいつをやっつけられるし、君は悪くないと言い聞かせる事もできる。

過去と現在は並列に並んでいて、同時進行で進んでいる。
最近は過去へ飛ぶ事が容易になった。
人の過去にも飛べるし、自分の過去にも飛べる。
未来の自分も実は現在に飛んで来ているのだと思う。認識しにくいけど。
現在の、困った迷った悲しい時、未来から来た私が励ましてくれている。
だから未来が不安で怖くても、今が楽しくなければ勿体無いから、味わって進む。
動いたって休んだって、自分が良いようにさえ動けば、未来は開くはずだ。