恐山の旅_長文レポート

【注意】
恐山の写真が大量にあるので、怖い方は見ないでね。
特に何も写ってはいないと思うが。
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長い戦いが終わったのでやっと夏休みをもらった。
高3の時に見た寺山修司の「田園に死す」が心に残っていて、大人になったら恐山に行こうとずっと思っていた。
遠い所へ行くのは財力と時間のある大人の特権だから、どちらもなくて二の足を踏んでいたけど、このタイミングなら行ける。
と思って2日前に行き先を決定した。
当日に行き先を決めた前回の紀伊白浜よりはまだましなスケジュール。

恐山は名前だけで怖がられている印象だが、意外と観光地化されているようだ。
調べるの大嫌いだけど、交通費やら宿やら目を逸らせない所はなんとかして、夜行バスで出発。

事前にiphoneのバッテリー購入。
注意点として、バッテリーは売り場にある間も放電中なので、出立までに満タンにしないといけない。今回ここがミスった。
現地で食べるものが足りなくなったら悲惨だから甘いおやつは買ってあったけど、夜行バス内で水と塩がないと死ぬと思い、水と練り梅を購入。
この練り梅が始めからしまいまで効力を発揮し続けたので、これから旅に出る人は梅を買った方がいい。

私は一人で夜行バスに乗るのは初めてだったので、大昔友人と乗った時の記憶で
「とにかく不眠」
「とにかく雑音」
「光がちらちらしてうざい」
「誰かが咳をすると殺意がわく」
など色々不快だったことを全て解消するべく(だが新幹線に乗るお金はない)
足が伸ばせるゆったりシートのバスを予約してあった。
あとはマスク、アイマスク、耳栓、ゆったり靴下、枕などの装備でなんとかしのげる。

ただ超神経質な上に、急いでいたから汗がひいていない、乗り物酔いする性質だからやけに緊張している。
こんなので乗ってすぐ顔全面と耳を覆ってリラックスできるわけがなく、即体調不良。
二時間位冷や汗ダラダラでこのまま青森までこれだと死ぬ、まじで死ぬ、と思っていた所で梅のことを思い出した。
水と梅を取るだけで冷や汗がすーっと引いていく。
何のことはなく水と塩が足りないだけだった。
その後普通に眠れたから、塩ってすごいな。
よく悪者扱いされてるけど、代謝が良すぎるとすぐ塩不足になるという基本を忘れていた。
てんぱりすぎ。
その後普通に眠れた。

早朝青森駅でごはん。観光案内所でモーニングをやっている所を教えてもらった。
時間がなかったのでごはんを小にしてもらった。
青森はほたての街なんだね。なめらかうま。
おさない食堂:¥850


青森から下北へ。下北からバスに45分乗ってやっと恐山に着く。
このバス、1日に3本しかない。流石だ。
つまり物凄く人里離れた場所なのだ。
終点の恐山手前でバスの運転手さんが一時降ろしてくれた。
冷水。俗界と霊界の分かれ目。

この冷水はヒバの原生林に包まれている。
森は嫌いだけど、この森には確かに神様がいると思った。
雨女だからこの日も雨だったけど、霧が煙ってやたらいい雰囲気だった。


恐山総門。旧い。六大地蔵は少し新しく感じた。
だが門は歴史が蓄積されてる。木の照りが良い。
入山料:¥500





ここで先に宿坊に荷物を置きに行く。
恐山には吉祥閣という宿泊施設があるのだ。1泊2食¥12000という高級なお宿である(建て替えた為らしい)。
とにかく広くて綺麗。
今まで素泊まりで安けりゃ何でもおkだったが、この宿を選んだのには訳がある。
この宿は門の内側にあって、閉門の後も恐山内に留まれるというレアな場所なのだ。
しかも内側にある外湯に入り放題なのだ。
この外湯は寺の中に4か所点在している。(宿の中には内湯もある。)
それと閉門後の霊場という心ときめく響き、この二点だけで高額を払う価値がある、と踏んだ。(あと精進料理)
これで後に手痛いしっぺ返しを喰らうのだが…。



一部屋10人泊まれるほどの広さ。
20畳ほどはあっただろうか。

ロビー。

時間は昼だったが朝しっかり食べたのでお昼は後回し。先に地獄にお参り。
境内のお地蔵様。灰色の空と色褪せた建造物と、赤い布と風車。
風車は入口の売店で売っており、線香を供えるように参拝者がお供えするものらしい。

どれもこれも風化している。風なのか雨なのか。
そしてこの錆具合が良すぎてハイテンション。
灯篭の手前の穴が三日月の形。

この青が物凄くビビットで驚いた。でも映えて綺麗。

地獄の入口にこの2体のお地蔵様がいる。
丸石には参拝者縁の亡くなった人?の名前が書いてあり、これはいたる所に置いてある。

お賽銭箱もあるが、小銭がいたる所に落ちている。だが全て風化して変色している。
見えないが穴から湯気を吹いている。

青い山に囲まれているのにこの一帯だけ壮絶なまでに荒地。岩場。
ひらすら荒涼としている。
「霊山」という言葉にこれほど似合う土地もあるまい。


荒涼としているのにたまに現れる風車だけが鮮やかな色で、ピンポイントでさし色を出してくる。
小憎らしい演出。
ボロボロのお人形がちょっと怖かった。



ひたすら岩場が続く。賽の河原の石が積んである。
その中にお堂や塔、観音様が点在する。また、○○地獄と名を冠した場所も点在している。
これには立て看板があり分かりやすい。



宇曽利湖が見えた。


雨なのもあるが、道など関係なく水が湧いている。
岩の隙間から湯気が出ている所も多い。
看板で「ガスが出ている為にタバコなどに着火するから絶対やめろ」と書いてあった。
私は喫煙者ではないが、こんな場所でタバコを吸う人がいたら自ら死亡フラグを立てにいっているとしか思えん。

カラフルな岩。黄色緑青、色んな色がある。
硫黄の影響なのかな。

悲しい過去は沢山ある。その集積地なのか。

血の池だけど赤くなくてほっとした。

表情が柔和で好き。

八角円堂。


鐘がとても美しい音色だった。
持ち手もボロボロだけど旧い物が好きな人にはたまらないと思う。
廃墟は廃墟でいいけど、私は旧くても手入れされて今でも使われている方にキュンとくる。





地獄を抜けて極楽浜に着いた。
奥の像は震災慰霊塔。
霧雨で煙ってひらすら美しい。雨で良かった。
晴れてたらまた違う美しさかもしれないけど、雨は凄く神々しい。
花曇りが丁度いい。




硫黄のせいで強酸の湖なのだが、遠くに水鳥がいるのが見えた。
酸の湖に鳥?鳥がいるってことは魚がいるってこと?酸なのに?
と疑問だったがまじでウグイという魚がいるそうだ。
酸に適応したそうだ。
7seedsを思い出した。


極楽浜をから地獄に舞い戻る。


石を積むことすらままならないのは重罪だからなのか。



地獄巡りを終えて丁度15時頃だった。
ゆっくり写真を撮りながらだと2時間近くかかった。
途中同じペースで見ていたおじさんと話しながら歩いた。
おじさんは定年間際の年に見えたが、会社を辞めた旅人で、日本各地を回っているそうだ。羨ましい。
車がないと辺鄙な場所なので、車でどこかお連れしましょうか?と申し出て下さったが、疲れもあったので宿でゆっくりすることにした。
だが夕飯まで時間があるし、身体も冷え切っているので総門入口にあるお休み処でおしるこを頂いた。
ご飯を食べられる所があって良かった。
蓮華庵:¥600
そして何となく自分土産の数珠を買う。
紫水晶:¥1200


吉祥閣に戻る途中に鳥居を見つけ登ってみると龍神堂というお堂だった。龍の綺麗な細工。



夕飯の精進料理。どれも美味しかった。
一点不満があるとすれば天ぷらのおつゆが薄かった事だけ。
でもそれだけ。ますます最近の自炊和食モードに拍車がかかりそうだ。
これを真似たい。味のしみた煮物は本当に美味しい。ゴマ豆腐も。
この日の宿泊客は私を含め3人。
お茶やご飯のお代わりはセルフサービスなので、少しずつ会話できて、仲良くなれた。
かくしゃくとしたおばあちゃんと、少し上のお兄さん。

宿坊の内風呂に入り、夕飯をとった後、外湯に入りに行った。
時間は21時。
暗すぎて写真は撮れないが、怖い。
夜の海も山も人間が立ち入る場所じゃない。
宿坊に泊まると言う事は一応外に出ても良いということらしいのだが、動物が出たりするので危ないそうだ。
熊も出なくはないらしい。
外出用に懐中電灯を貸してくれるが、境内のぽつりぽつりとある外灯とそれだけでは心もとない。
何しろ一人。
友人と一緒ならまた違うんだろうが、一人で夜の霊山に立ち向かうなど死亡フラグの立てすぎだ。
こそこそと静けさの邪魔をしないようにさっと入ってさっと出る。
ここの硫黄風呂は長湯禁止で、3分から10分までしか入ってはいけないようだ。
そんな事を言われずとも熱過ぎて長湯なんかできない。
それと目に湯が入ると危険だそうだ。
目にはかなり気を付けて湯から出た。


のに翌日目が変。
おはよう6時起床。宿坊なので早朝のおつとめがある。
お経はすごくリズミカルで歌ってるみたい。鐘と木魚が凄く大きい。音も綺麗。
最初私は朝もやがかかって綺麗だと思ったのに、自分の目がおかしいことに徐々に気付く。
A:ノーマル

B:私の目フィルター

これ以降丸一日私の目からの風景はずっとこんなかんじ。
光と白が増幅されてガウスがかかったようにぼやっと光り続ける。
屋外は一枚白ベタをかませて透過率20%。
特に生成りではないオフホワイトの服を着ていた為に、自分の袖を見るとギラギラと青く輝く。
自分の手すらガウスがかかって光る。
ドラマやアニメでよくある回想フィルターと言えば分りやすいと思うが、実際なったら結構怖い。
特にお山の上はau圏外。それ以前にiphoneの画面すらよく見えない。ぐぐれない。

朝餉。この時点では恐怖感はそこまでない。美味しいし。
昆布のやつを家で作りたい。なますも。

状態異常フィルターが怖いが始発バスが10時なので、それまで散策。
勿論私の目にはこの写真とは違う景色が見えていた。






宇曽利湖から流れる川を結ぶ太鼓橋。手前が人の世、奥が霊山。
水が澄みきっている。
三途川というネーミングセンス。

ちなみに宿のお坊さんに聞いてみたが、私のような症状の人は過去いなかった?らしく、市販の目薬をくれた。
温泉には気を付けていたと言うと、部屋にガスがたまったせいかも、ということだった。
確かに朝の換気を忘れてはいたのだが、そんなに長く部屋に留まってはいなかったはずだが。
単に不運なのか。
目が状態異常のままお山を降りる。

平地に降りると電波復活。
とにかく硫黄と目で検索をかけまくるとヒットしたのが「二酸化硫黄中毒」「角膜熱傷」
内容が怖すぎるのと、ピンボケとガウスが悪化しているので下北に着いてから薬局を教えてもらった。
携帯用のアイボンで目を洗っても特に良くなった感はない。
この後弘前からこみせ通りに行く予定だったが、恐怖との戦いになる。
さらにその晩夜行バスで長時間かけて帰る。
その間さらに悪化して寝てる間に目が開けられなくなったら、などネガループし始めたので、こみせルートは破棄。
青森で病院に行く事にした。
野辺地まで一緒に泊まったおばあちゃんと一緒だった。「疲れたらまず目に来るからね」と慰めてくれた。
青森の観光案内所で眼科を聞き、バス移動。
教えてもらった眼科の先生はいい人だったが、「なんでこんなんなった?」と分からない顔をしていた。
真実は「角膜がすりガラス状になっていた為、光がちゃんと視認できないでぼやっと見える」そうだ。
角膜は本来つるっとしたガラス状になっているべきだが、硫黄のせい?で角膜につぶつぶと穴が空いた、荒れた状態になっていたそうだ。
角膜熱傷ですか?とビクビクしながら聞いたら、それの軽傷版らしい。
軽傷で良かったけど原因は謎だ。
目薬を処方して頂いて、それで終わりのレベルらしい。良かった。転職考えた。

帰りの夜行バスは弘前から取ってしまったので、青森で時間をつぶすしかない。
病院を教えてくれた案内所に経過をフィードバックし、開き直ってお土産を買い漁る。どこの店も閉まるのが早い。
光が強い場所はきつかったが、東京のような綺麗な土産屋が遅い時間までやっていたのでそこにいた。
Aファクトリーという名前で三浦屋や成城石井みたいなかんじ。
今まで精進料理だったからか油に呼ばれたけど、割と普通の牛丼に思えた。
寿司屋に行けば良かったと少し後悔している。
この時点で夜なので、さらに目が悪化している。写真が大分おかしいのはもうあまり見えてないせい。
番紅花:¥980

この段階で19時だが、目が痛い。処方の目薬がギンギンしみる。
A:ノーマル

B:悪化したフィルター

実際はBの強調した光がもっとひどいかんじ。
青森の夜景は美しいが、普段なら好きなライトが増幅して目を刺してくる。
文字通り刺す痛み。
光を処理しきれないんだろうか。
漫画でライトが丸く円を描いてウニのように放射状に描かれる表現があるが、それ。
それが目を刺す。
さらに瞼に何か入ってる。
目を開けてるのも痛いし、閉じるのも痛い。

そんなかんじで弘前へ。
そして何もない弘前でぽつんと待ち、慣れたかんじでバスに乗れた。
こんな目で眠るのは怖かったが、足りないのは睡眠だと思い込み無理やり目を閉じた。
起きたら新宿だった。
目は7割位治ってた。

何だったんだ!
祟りなのか、目に霊が乗り移ったのか、もしくは私の虚弱と硫黄が招いた特殊イベントだったのか。

大変だったけど落ち着いて対処できたし、目の事をおしても恐山は美しい場所だった。
帰宅して3日経った今、目は普通に見える。
ただ痒みがあるから週明けも痒かったらまた眼科に行こう。

これだけ詳細を書いたのは覚えておきたいのもあるけど、もし恐山に行って私と同じ症状になった人がいたら参考にしてほしかったから。
勿論いない方がいいに決まってるけど。
今気づいたが酒を一滴も飲まない旅だった。
こみせ通りに行けなかったのもあるけど、作り酒屋に行きたかったな。
だが充実した旅だった。