体が運動欲求の発作を起こす

常日頃運動不足。そのくせ料理好きでお菓子も作る。作ったら全部食べる。外があまり得意ではない。家が好き。

そういう期間が続くと鬱屈した体が「なあなあ、ここからあそこまで行ってみたくない?なあ?」と言い出して、ここからあそこまでチャリで行けるのかな?とグーグルマップを検索し始める事がある。

私のチャリは少し良いマウンテンバイクで、実用の為に買った。電車もバスも嫌いで、なるべく乗りたくないからだ。電車は仕方なく乗るけど、バスはなるべく回避したい。勿論世話になる事も多く、インフラは大切だし尊重したい。ただ基本的に臭いと揺れと密集が無理なだけで。でもそれが全てだ。

乗り物の臭い、これが乗り物酔いの土台。シートの化学繊維の臭いだそうな。小4の時の社会科見学の自動車工場の人に聞いたらそう言っていたから間違いない。それに人がたくさんいると色んな影響を受け取ってしまう。見えないやつを。

だからチャリでなるべく距離を稼ぎ、公共機関は最低限にしたい。これが何となく持っている目標だ。

その割に外に出ないので、体はなまりまくっている。そして体が呼ぶ。おい、動けよな、と。

 

books and something という中目黒のイベントに、友人が誘ってくれた。友人と言いつつも会うのはこれで2回目だ。それでも話してみると、視界の高さやベクトルがかなり似ているという貴重な人だった。大切にしたい縁ができた。

 

さて、中目黒にチャリで行く話だ。片道14kmという、かなりやばい距離である。3年前に片道7kmの距離を通った事があった。ジャズボーカルのレッスンで。一応何とかはなっていたが。軽く倍だ。悩んだ。あの時より体力も落ちてるはずだし。でも動かない事には始まらないので、出来心でやってみる事にした。

結果から言うと、できた。1.5hで。着いた頃はもうやりきった!今日はおしまいな!という気分。諦めようか迷った新代田駅は駐輪場が無い事、新代田以降渋谷に至るまでは坂だらけという事を明記しておかねばならん。

それでも今まで見たこと無い景色で、高級住宅街や川沿いの花、裏の細い道など、面白さは満載だった。新鮮で楽しかった。

 

だがもう、走りたくない!限界だった。翌日は池袋に用事があったので、チャリを新宿に移動させ、翌日は新宿から池袋にチャリ移動、池袋から走って帰宅ルートに変更。

伊集院さんの深夜ラジオをよく聞いているが、自転車旅話で「もうさ、(チャリの事を)忘れて電車乗って帰りたいんだよ」という事をよく言ってるのを思い出した。正に。正にそれ。

 

新宿に移動する際、渋谷を通り不思議な気持ちになる。行きの下北沢もそうだった。いつもは電車で来る場所に、チャリで来たんだなぁと。来れるもんなんだなぁと。その後の新宿の風景も、池袋に移動する時も、そこから帰る時も。ずっとその不思議さが付いて回った。

写真の一枚も撮っていなかったのが悔やまれる。(でも写真を撮ろうとしたらもっと時間がかかってしまっただろうな)

 

家〜中目黒14km,中目黒〜新宿5km,新宿〜池袋5km,池袋〜家12km,二日間の走行距離は合計36km。根性だけで乗り切るのはお得意技だが、これは本当にへばった。

 

ただ、運動をすると「気」が大きくなる。朗らかになるというか、後先考えず人に声をかけられるようになったり、知らない人に親しげに話しかけたり、そういった「根明」的行動が増える。

それは疑心暗鬼で人の事ばかり気にしていた以前と大違いの人格で、もしかせずとも、朗らかな方が本当の人格なのでは…そっちが素なのでは?というか答えはそれしかない。

体が答えを知っている、と言うべきか。発作という形で活性化させて気づかせてくれたんだと思う。

色んな人、色んな体のタイプがあるけど、最近は特に、本を読むことに重きを置かなくなった。頭を動かし過ぎる事に意義を感じないのだ。五十嵐大介の「魔女」の中に『なぜ本を読んではいけないの?ーあんたには経験が足りないからよ。』というやり取りがある。叡智。頭が先走り過ぎては何も生まない。私が最近本を読んでは感じる違和感はこれが起点になっている。頭について行くために、体を動かさねばならない。頭から体へギアチェンジする時期に入った。