「はなまる魔法教室」が深淵を覗いてくる

「はなまる魔法教室」が深淵を覗いてくる|もういな いお|note

noteにも同じ内容を置いたが、ブログが好き放題する本拠地です。

 

(先に言っておくがネタバレは無い)

「はなまる魔法教室」…今注目している作品。といっても打ち切りで連載終了してしまった。

マンガワンという小学館のアプリで連載(掲載終了)していて、1、2巻が出ている。

はなまる魔法教室 1 (裏少年サンデーコミックス)

はなまる魔法教室 1 (裏少年サンデーコミックス)

 
はなまる魔法教室 2 (裏少年サンデーコミックス)

はなまる魔法教室 2 (裏少年サンデーコミックス)

 

3巻を出せるだけの話数で連載を終了し、それなのに3巻は出版社から出ない事が決まってしまった。

そんなに読者が少なかったのか、と思いきや最終話のコメント欄は阿鼻叫喚、というには品の良い応援コメントでいっぱいになった。「コメントしたのは初めてです」という字が並んだ。おそらく読者層が漫画アプリでコメントするような積極性を持つ人達ではないのだ。静かで穏やかな人達が読者だった。そして騒がないし相対的に数も少ないから、盛り上がらないと見なされてしまった。

でも作品の内容がすごい。3巻は出てくれないと、私が困る。何がそんなに魅了するって、ほんわかした絵柄で相当ヘビーな現実を見せてくる。現実の乗り越え方を、ほんの小学六年生が目の前で見せてくれる。それがすごく骨太で、芯がある。アイテムは魔法で、昔読んだファンタジーの柔らかさを思い出させる。ナルニア国物語や、果てしない物語に世界に通じる。現実の容赦なさは十二国記に通じる。

 そして私が敬愛する安田弘之先生のちひろシリーズの、あの世界…同じ水源から水を汲んでるのでは?と勝手に思っている。

智慧の泉というのが地球の奥にあって、辿り着いた人はそこから水を汲んで各人の型に則り世界に供給しているんだと、私は考えているのだ。ミヒャエル・エンデエドガー・エンデ、安田弘之先生も石井ゆかりさんも、しいたけさんも、はなまるの著者である井上知之先生も、同じ水源の同じ匂いがする。)

※「水源…優しさは水」の概念は大元の記事か完成形の点線面vol.1を参照

はなまるでは、キャラクターに付与される優しさというものが、ただキャラ付けとして貼り付けたものではない、本当に生きて、その優しさを活用している。それがすごい癒しになる。

資本主義的に、売り上げ上位にはなりにくい。売れやすい、きらびやかな世界ではないのだ。私たちの世界の地続きに存在する世界。分かりやすい勧善懲悪ヒーローの世界ではない。日常で少しずつ強くなる、真正面から向かい合う作品だ。それにバトルものではない。強くなる=優しく柔軟になり自分を生かした形で世界に適応する。これだ。

私はこの手の作品を覚醒コンテンツと呼んでいる。その逆は麻薬コンテンツだ(出典は山田玲司先生)。麻薬コンテンツは売れる。皆が欲するから需要がある。今それが供給過多になっている気がする。私も昔欲したが、もう十分世話になり元気になった。だからもう必要ない。(麻薬コンテンツの存在理由はゆりかご論に書いたので割愛)

今欲しているのは覚醒。もっと目覚めたい。この鈍った頭を揺り起こしてほしい。体を動かしたい。自分が前に進みたい。だから応援したい。進む力に、ヒントになってくれるから。

現代で資本主義に対抗?するのは教育なのだが、この作品は文化庁とかに保護してもらった方がよいのでは、とさえ思う。即金を生む作品ではなく、ゆっくり人に種を植える作品だから、資本主義には向かない。でも続いた方が世の為になる。この作品が続かないのは、長い目で見て明らかに社会的損失なのだ。

同じように社会的損失だと感じたファンの1人が『はなまる魔法教室』応援委員会 (@hanamaru_fight) | Twitterを立ち上げてくれて、そのおかげで自費出版という形で3巻が世に出ることとなった。

www.pixiv.net私も寄付に参加する事ができた。お安い御用だ、これで3巻が出るのなら。

アマゾンの期間限定無料公開とマンガワンでの掲載終了のタイミングに間に合わせるために勝手に応援ポップを描いちゃうし。

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(画像を更新しました!2019/09/19)

別に書店員でも何でもない。最近よくツイッターで見かけるファンが勝手に布教するのを真似たやつだ。深夜から描き始めて気づいたら昼だった。こんな集中するの本当に久々だよ。絵を描くのが楽しかった。仕事中なんか早く帰りたくて仕方なかったのに。ずっと苦しくて描けなかったのに。

そして読者オフ会が第二回まで開催され、ついに2018年08月19日「コミティア125」で3巻が発売となる。通販もある。売れてほしい。これで作者である井上先生の生活がなりたってくれないと、続きを描いてもらえない。

描いてほしい。クラス1人ずつスポットを当てていくのだ。私は子供の頃本当に友達がいなくて、それは変に人を見下すように教育を受けたからだ。鼻で笑って他人に興味がないふりをする、とても嫌な小学生だった。でもこの話の中には、あの時のクラスのような色んな子供がいる。この子達の中身を覗けるなんて、それは時間を飛び越えて好奇心を満たせるということだ。知る事は過去をも変える。新たな解釈をすることで、取り戻し、乗り越えることが出来る。それが欲している推進力になるのだ。

3巻で一人の子供に対しての見方が変わってしまった。ポップに描いた「ちばちゃん」である。他人の印象が180度変わる。知れば知るほど愛がわく。それが人間関係の醍醐味であり、生きる知恵だ。その変化に付き合えるかどうかで、人生の豊かさが変わる。いつも他人を切り捨ててしまいがちな私は、ものすごく大切な過程を教わった。

おそらく読者年齢層はかなり幅広い。希死念慮のある小学生だった自分に読ませてあげたら、さぞ救いになるだろうと思う。でも大人である自分も面白い。コメント欄では「子供が気に入って読んでます」「将来子供が生まれたら読んであげたい」「学校や図書館に置いてほしい」「おっさんだけど懐かしい」「おばあちゃんが読んでる」と色んな年代の人が男女問わず読んでいるように見えた。

潜在的にニーズは高そうなのに、そういう人達、こういうブログやnoteを読まないんじゃないかと勘繰ってしまう。そもそもネットを見るんだろうか。NHKでアニメ化したら知ってくれるんだろうか。コメント欄でも感じたが、サイレントなのだ。ROM気味とでもいうか。(ROM=reading only menber)

私はずっと営業とは無縁の生活をしてきた。アニメーションの制作現場にいたけど、スタジオの奥底で日光は当たらない、売り上げとは何の関連もなく一律安い固定給で(多少関連あるけど割愛)…勿論質は売り上げを左右するが、本質は芝居絵シナリオ演出だ。私の仕事はそこまで売り上げに関わるものではなかった。だから今、なるべく多くの人にこの作品を知ってほしいけど、こんなことを書くしかないのよね。でも読んでもらう分母の人数が増えたら、好きと思う分子の人数が少しは増えるんじゃないかと思う。

そして色んな会社の営業広報の人、すごいね。やってみないと、そのすごさは分からない。

なので、これを読んで気になった人は、買って読んでみて下さい。